東京都品川区、オフィスビル街から程近い場所に、小さな神社がありました。
そこは都会の真ん中にありながら、喧騒を忘れるほどに厳格な場所でしたが、
あまりに古くひっそりとしていたために、毎日前の通りを通勤している人でさえ、
“はてこんな所に神社があったものか”と顧みるほどだったのです。
長らく神主は不在で、あとは廃れるのみと思われていましたが、
ある日年若い青年が一人、ふらりとやってきたというのです。
しかしそんな青年を誰も見たことはなく、相変わらず世話しない街の一角で、人知れず神木が枝を揺らしていたのでした。