「ミツキ…何をするつもりだ…」

アリアが動揺した声で口にした。

「何?何なの?!アスベラ!!」

間髪をいれずにカルラが聞き返す。

「ミツキが魔方陣から出ようとしている…!」

「そんな…!?」

「くそっ!ミツキ…!!」

サイフェルトが素早くニロに跨り、光姫の元へ急ごうとする。

「待て!行ってはならぬぞ!」

「何でだよ、アスベラ!!!このままじゃミツキが…」

「行って何になるというのだ!?もしお前があそこへ行き怪我をしたとしても、ミツキは自分のことだけを考えとおせるとでも言うのか?!帰れなくなるぞ!」

「くっ…ちくしょう…!!ミツキ…!!」

サイフェルトは悔しさに顔を歪ませた。こんな…こんな時に何も出来ないなんて…!

「ミツキさん駄目だ!その中から出ちゃ駄目だよ、戻ってーーーーーーー!!!!!」

アルフが悲痛な声で叫ぶ。岩山の上のあたしにもちゃんと聞こえた。だけど…ごめん、ごめんね。これがあたしの決めたことだから。魔方陣の強力な殻に守られているだけでは駄目なのよ。

もしそれで苦痛とか苦しみとか背負うんだとしても構わないの。ハイゼを苦しめた…罰を受けるためならば。

 

 

 「ハイゼ。」

あたしは魔方陣から1歩外に出た。途端に竜がこちらに目線を合わせる。光の具合で色が変わって見えるように、竜の目も真っ赤になったり朱色になったりを繰り返している。グルルルル…という低い唸り声を喉で震わせながら。

「ハイゼ…あたしはいつも…あなたと一緒よ。」

光姫は両手を竜に差し伸べた。いつでもハイゼのことを考えてた…いつだって心はハイゼを求めてた。

悲しかったり、寂しかったり、嬉しかったり、愛して…いたり。

 

「ここに…いるからね。」

逃げないからね…あなたを元に戻すまで。

 

 

グガアアアァァァァ…!!!!!

 

 

竜は突然耳を劈くような咆哮をした。まるで体内の苦しみを全て放出するように。そしてもう一度あたしに目を向けた。赤い目…それでもいいよ。

「あぁ…!!!」

「ミツキ…!!!!!」

岩山の下から悲痛なざわめきが起こる。誰もが呆然として絶望した。竜が…思い切り光姫に噛み付いたのが見えた…。岩山の上から光姫の姿が一瞬消える。

 

もう…もう終わりだ…!!

 

     

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